日時計の針

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日時計の針
関根健人

繭倉が燃えている。
繭倉が燃えている。

炭のような聲で啼く鳥を追う男の
同心円状に飛ぶ汗が夜です。
眉根に帷がぶちあたって、麝香が焦げつく。
螺旋状の図像を斜め上方向に
重ねてゆく西洋舞踊の指つき。
男は鍬をもち、相も変わらず
風見鶏の腰骨を追っています。
若き幽冥の接吻した時分には、
一枚の噛んだ感光紙はやわく甘くなっている。
その濃い影を深く抉った瞼が夜です。

日照りは揮発する
信仰のなかでさんざめく。

開店前の文具売り場で
試書きの紙には、無数の(透明な)句読点が
ひそやかに
乱打されている。
「観音様。舌は熱くて、
 淡雪は消えてしまったのでしょうか。」
解体された文字のうるみが、
やさしく靴下を引き出しているのは朝です。
魔法が碧色の泥濘なら、
過去は濾過されずに残った芥の中にありましょう。
かなしみは剥離して、硝子戸は棄却されて。
(瑣末さと霊感は止揚されて一本の灯台となる。)
夏休みは貯水湖の底で射られた。
菌床の中で静かに抱き留めるはすべての朝です。

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