横濱中華街夏暁叙景

スクロールできます

横濱中華街夏暁叙景
関根健人

九月九日
颱風十三号インニョンインニョンが熱帯低気圧に変り
すいぎん色のしずくで
中華街チャイナタウンチャイナタウン
つやめく明晰さをかさね
(すべからく実線でむすばれる提灯、
油染あぶらじみあぶらじみ、幾何、そうして隠微な彗星
ふたしかな
薫香の焚きしめられた
小匣にねむる
まろうどのかなしみよ
やはらかな喪失の、さや

(きこえるはずのなかった
(やさしいくにの、海潮音 それなのに
官能のうすれたせかいでは
(匙は白濁した碗に沈みこんだ
(粥と嗄れたわたしの失望を掬うのです
距離をはかりかねて
iPhoneのアラームが鳴った
(未だ青いさなぎに似たわたしたちだった
まどろみの汀にある
ゆめを手折っても
胸の湿疹は痒くて
窓には中国むすびの紐、
かたく締まって拒むもの

店をひらく迄に
茉莉花茶ジャスミンティージャスミンティーの瓶は汗をかき
みずみずしい
濃紺の襟付きワンピースドレスの子が
(一過、雲はまだらに千切れ
(しなやかに曙光がふくらんでゆく
Flamingoのように片脚で爪先立ちしながら
seamlessに廻転して
踊る
練習をしている

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次